建設業界における「天下り」を回避する方法

フジテレビ関連の報道が過熱する中、その中の一つに、天下りに関して総務省からフジテレビへの押し付けなどはない、とのコメントがあった。押し付けまではないだろうが、それを長きに渡る暗黙でやっていたのに今更何を言っているのか?と思いながらも、ここで建設業界での天下り状況について少し述べたい。

 

建設業界でも天下りなどは当然ある。私も顧問先の社長さんから、天下りの受け入れについて相談された事などは何度もある。そしてこれは特に公共工事関連の会社に多い。建設業界の中の業種は言えないが、私の顧問先の売上の100%が公共工事の会社などでは、毎年12月頃になるとその打診で電話が役所から入ってくる。翌年の3月に定年になる数名の受け入れについてだ。

 

「そんなの、一蹴して断ればいいんじゃないですか?」と言った所、「そうすると翌年の発注に響くからそんな事は言えない」と社長は言う。そんなのは完全に優越的地位によるものではないだろうか。

 

結局、役所からのその要請を受け入れざるをえない会社などは数多くあるだろう。それで仕事がもらえるのならしょうがない、と会社側の人は皆思うしかない。逆に言えば、それさえ受けておけば、「ある程度」の仕事は担保されているので、会社側にとっても100%悪い話でもないので、長きに渡りこの慣習は続いているのだろう。これはもうどの業界、業種でも同じではないだろうか。民間でも大手企業になると、地位のある役員などには少なからずその手の話はあるだろう。そうやって世の中はずっと成り立っているのかもしれない。

 

役所に入り、定年まで過ごし、その後の就職先までも役所がお膳立てしてくれる。何と恵まれた世界だろうか。民間の会社の人々は、上記の大手企業の役員レベルの人を除いては、当然の如く定年後の働き口は自分で探さないといけない。定年どころか定年前でも、リストラや会社の状況等で辞めざるを得ない人も世の中には数多くいる。いくら今の時代が人手不足でも、「普通」の人がどこでも好きな仕事に、又、望む報酬の仕事にありつけることなどはほとんどないからだ。平均寿命が伸び続ける中、年金も頼りにならない中、どうやって自身が収入を得るために働き口を探すか?一般の人は皆、将来に不安を感じて過ごしている。

 

普通の役所の人でも、多くの人がそんな天下り先が用意されるくらいだから、もう官僚などは100%の世界だろう。しかも高報酬で。先日、ある記事で、官僚の天下りの報酬だけで年間40兆円レベルもあるとあった。彼らの定年後を「自力」にさせるだけで、それだけの余剰の金額が生み出されるということだ。生産性のある仕事を報酬分以上にこなしてくれるのならいいだろうが、概ねそんな人はいないだろう。

 

先程の私の顧問先に関しては、私もいろいろとその対策を考えた結果、「決算書」をその役所の「天下り斡旋窓口」に持っていく、という作戦を使うことにした。役所の人はそもそも「決算書」というものを見た事がないはずだ。と言うより、世の中の会社が「損益」で成り立っていることすらも実感として知らないだろう。そこで「当社の業績はこんなにも厳しいんです」と、決算書のPLを見せて、半泣きで窓口に訴えかけることにした。

 

その会社は私がコンサルタントとして入らせていただき、もう12年になる会社だ。損益は2年目から劇的に改善され、安定経営は10年以上ずっと続いている。但し、BS上での不良資産がまずまずの金額であった為、税金のことも多少考慮し、その一部を毎年損金で処理をしていた。よって、利益は出ているが、損益上では毎年100万円程度の純利益しか出ていないという状態にあった。そのPLのみを、その役所の人に見せることにしたのだ。

 

予想通り、その役所の人は、会社の決算書などは見たことがなかった。「こんなに厳しかったんですね・・・」と半ば絶句状態。今のPLに天下りに人の年収が加われば、会社は大きな赤字になると訴えた所、「これは無理ですね」と強く理解を示してくれた。しかも「こんなに苦しい経営でしたら、もっと仕事を発注します!」とまで力強く言われ、結果として一石二鳥状態になり、その後4年以上は経つが、天下りの打診などはその後一度もなく、受注の方は今まで以上に安定している、という状態が続いています。

 

天下り案件の回避の仕方の参考の1つにしてください。当然、全ての業界、業種、会社では無理でしょうが、建設業界だけでなくどの業界にも使える部分はあると思います。