利益を上げるにはどうすればいいか?という問いには、過去の4冊の書籍「建設業のための利益改善バイブル」「粗利だけ見ろ」「建設業利益最大化の法則」「粗利至上主義」で同じように書いている。
「利益」を軸にすること、それも「粗利益」を軸にした経営を行うことだ。これ以外にはない。又、これ以上の大枠での方法は存在しない。
それではその次に必要な考え方であり進め方は何か?と言うと、それは「目標設定」と「ルール設定」になる。各書籍ではっきりとしたそういう言い方はしていないので、これが初めての明言とも言える。言葉としてはシンプルで、よくある「表現」でもあるが、これは実はかなり奥が深い。そしてほとんどの経営者は実行することができない。
「目標設定」と「ルール設定」は、もう半歩進んで言うと、「設定した目標を見失わないこと」と「設定したルールを守りきること」と言い換えることが出来る。いくら目標を設定しても、そしてルールを設定したとしてもそれを守らなければ意味が無い。そもそも守ろうとしなければその設定そのもが全く意味をなさない。しかし「粗利益」という唯一無二の目標設定をして、それを実行するためのルールを設定したとしても、それを守り切ろうとする経営者は少ない。本当に少ない。
粗利益を軸としている経営者が10000人中100人(要は100人に1人)いるとすれば(実際はそんなにいない)、それを守り切ろうとする人は、その100人中10人位しかいないだろうというのが実感だ。よって、粗利経営を本気で実践する経営者は1000人に1人、確率にして0.1%以下だろうというのが私の感覚だ。
私がコンサルタントとして入らせてもらっている会社ですら、その傾向が出てくる。言い方は悪いが、ちょっと目を離すと以前の経営者ご自身感覚のままに受注していく。いくら理由を聞いても今回はイレギュラーだったとか、どうしようもなかったと言われることが本当に多いのだが、その小さな決壊は徐々に徐々に大きくなっていく。そしてその結果は決算書に現れてくる。
よって、私が月次のコンサルティングで顧問先の経営者の方と毎月「摺合せ」し続けているのが、「その方向性であり目標の念押し」と、「イレギュラーを減らすこと」、そして「イレギュラー時への対応の仕方」になってくる。コンサルティングのやり方や進め方自体はコンサルティングの序盤にある程度は決まるが、その後の「月次の進捗確認時のミーティング」こそが何より重要になってくるのだ。最終的にそこで決まると言ってもいい。
ミーティングの間隔は空けば空くほど、各経営者は以前のご自身の感覚に戻り、以前のご自身のような判断をし、会社は以前のような業績に少しずつ戻っていく。皆、ルールから逸れたことについては様々理由を言われるが、言い方は悪いがそれは「ただの言い訳」に過ぎない。しかもこれは無意識にそうなってきているのではない。目標とルールを追いかけ、守り続けることが「徐々に辛くなって」その結果徐々に離れてしまったことに他ならないのだ。筋トレやダイエットなどを最初は強い覚悟をもって始めても、徐々に、「そこまでやらなくてもいいか」というもう一人の自分が出てきて、それをさせまいと自制をかけるのと同じような感覚ではないだろうか。
最初の目標設定なども、実はそう簡単ではない。必要かつ実現可能なレベルの目標をギリギリの線で決めないといけない。必須であるルールもそのラインの設定は難しい。簡単すぎてもダメ、難しすぎてもダメなのだ。そしてそのように決められた目標でありルールをいかにして守り切ることが出来るか?その伴走者として、コンサルタントとしての私がいると思っている。
ノーペインノーゲインという言葉があるように、痛みやストレスを伴わずに利益を得ることは出来ない。利益がいつのまにか上がるような魔法のようなものは存在しない。サプリを飲むだけでダイエットは出来ないし、筋肉なども付かないというのと同じことだ。
しかし、その通りにやれば必ず業績は劇的に上がるという「手法そのもの」は存在する。それをやり切れるかどうか、やり切れさせられるかどうか、というそれぞれの意志が全ての根本だとも言える。