利益を上げる方法は、突き詰めれば、「売価をいかに上げるか」ということになる。その売価を上げるには、何より先方にその「理由」を言わなければならない。そしてその「先方に理由を言わなければならない」部分こそが、会社であり、営業マンであり、人々が売価アップ、つまりは値上げをしない又はできない、又はしたくない大きな大きな理由になっている。
皆、売価を上げないための、もっともらしい理由や言い訳を言う。「これ以上金額を上げると受注できない」「他社に取られる」「もう声がかからなくなる」「利益は低いが受注できないよりはマシ」「手間がかからない現場だから」「ペーパーで通すだけの仕事だから」「会社から近い現場だから」「知人だから」「親戚だから」等々・・・、挙げればキリがない位の様々な「言い訳」を今まで聞いてきた。
しかし、実はそこには、そういった理由以外の大きな理由が存在する。それが、「高いですね、と言われたくない心理」と「金額を高くする理由を言いたくない心理」だ。ほぼこの2つに集約することが出来る。
当然、その気持ちであり思いは私にも分かる。何故なら、私も皆と気持ちは一緒だったから。というより今も一緒だと思う。私自身もサラリーマンの営業時代、そして起業後でも見積り提出時は同じような心境になるからだ。「今回はしょうがないだろう」と自分に言い訳をして、値引きに応じるか、言われてもいない安い金額で出してしまいがちになる。高いと言われたくない、そしてその理由を言いたくないだけのために。
この心の壁を乗り越えない限り、会社の利益アップや、個人事業での利益アップなど望めない。いくら経費削減を試みようが、当然そこには限界がある。今の世の中の実質賃金アップがマイナスになっているのと同じ理屈だ。賃金は「多少」上がっても、物価の上昇には到底敵わない。
売価は「大幅に」上げるしかない。企業の収益を大きく上げるにはそれしか方法はない。効率化も経費削減も収益を大きく押し上げることなど決して出来ない。そこはもう腹を括るしかないのだ。それでも上記の言い訳を思い続け、今後も言い続けるのであれば、正直収益の大幅な向上は諦めた方がいい。絶対に無理だ。
そしてこのブログのタイトルにある、先方に説明する売価を上げる理由はこのたったの2つだけだ。「労務費のアップ」と「材料費のアップ」この2つしかない。誰もが知っている、又誰もが理解しているこの2つの言葉だけを投げかけるのが、もっとも効果的だ。「とにかく人件費が上がってまして」「材料代がものすごく上がっているんです」と、この2つのセリフを言うだけでいい。
自社の利益はこれ位は必要だとか、その金額でないと会社が立ち行かなくなるとか、自社の実状を正直に語る会社の経営者や営業マンがいるが、余計なことをご丁寧に言う必要などない。それを言った所で、逆に相手に突っ込まれるだけだ。自分で墓穴を掘ることになる。
労務費と材料費のアップは、今の世の中の共通の概念だ。これに抗える理由など存在しない。住宅やリフォームで一般の顧客に対してもこの2つで十分だ。相手に関わらず言える理由とも言える。実際、先方だって今の時代は全てが高いことなど分かっているのだ。その理由を一応言ってやればいいだけだ。相手の会社の担当者に金額を出す場合、その担当者も金額が高い理由を上司に言う必要があるので、その理由を授けてやればいいだけなのだ。
とにかく余計なこと(理由)は言う必要はない。人は突っ込まれると余計な言い訳を長々と懸命にする傾向にある。聞いてもいないことをひたすら言い続け、最後には墓穴を掘る。そして信頼を失う。今の政治家と同じだ。聞いたことには決して答えずに、聞かれてもいないことを延々と語る。とにかく余計なことは言う必要はないのだ。
「金額は高くなっていますが、スピードをもって誠実に対応させていただきます」とだけ言い切って、「スピード対応」「スピードリアクション」のみに注力してその仕事を完遂すれば、信頼は必ず高まっていく。失注したり、次の受注機会が失われるのは、金額が高いからではない。対応の悪さ、リアクションの悪さ、そしてそのスピード感のなさ、しいてはその誠実さのなさを見限られたに過ぎないのだ。金額ではなく、自身であり自社が見限られたに過ぎないということを強く自覚し、提出する高い金額には責任を持って強い思いで対応すべきだ。
利益が取れないのは、金額に負けたからではないということは常に思っておかなければならない。裏を返せば金額などは高くてもいいのだ。しっかりとした対応こそが大事になる。そういった中でも、どうしても安い金額のみにこだわってくる得意先などとは、そもそも取引はすべきではない。
上記のことは、世の中の概ねは皆、実践できないと思う。上記の内容に対しても、ある程度の反論や、もっともらしい言葉も聞こえてくるだろう。しかし上記を実践出来る、そして突破できる僅かな会社のみが、これから生き残ることができるのだろうと私は思っている。