コロナが明けて約3年。業界的にはコロナ禍にウッドショックがあり、物価高・人件費高が他業界同様に拍車をかけてきている。材料費は引き続き緩やかに上がり続けている。ある調査によれば、材料費は慣らすと数年前から約30%上がっているらしい。
労務費の高騰は更に大きい。高騰というよりとにかく人がいない。人手不足などと安易に言えるレベルではない。大手企業ですら人員が確保できないのに、零細企業の中でも、売上高10億円未満、5億円未満の企業に人が応募してくることなどほぼない。
需要と供給のバランスで市場価格というのは概ね決まる。建設業界は一時期の供給過多の時期を超え、今は需要が多い状況になっている。求められてはいるが、業者がいないということだ。
需要の方が多い時には普通は金額は上がっていく。ところが建設業界を見ていると、「金額を上げる」という行為がなかなかなされていない。これは長年デフレだった日本特有の思考でもあるのだが、その傾向は特に建設業界は根強い。
私などがコンサルティングで金額の設定で利益率を高く設定しても、多くのの経営者すぐには納得しない。「それで仕事が来なくなったらどうしよう」と皆、躊躇う。気持ちは分からないでもないが、今は需給バランスが完全に崩れているのだ。そして今後も戻ることはないだろう。原価も上がっており、人件費も上がっている。だったら売価をそれに見合う形で上げるしかないのだ。躊躇う理由なども何もない。体力がある会社なら「顧客のために」と言ってボランティア活動を続ければいいが、そういった会社でもいつかは限界が来るはずだ。まして体力のない会社、借入金が多い会社などは一瞬も躊躇うことはできない。だが皆躊躇う。
もっと言えば、もうデフレの時代など来ない。今後はひたすらインフレが続いていくだろう。踊り場的な時期はあるだろうが、マイナスに転じることなど考えられるはずもない。
物価高は続き、労務費の高騰、そして人手不足などは延々と続く。延々と。業界従事者などは増えるはずもなく、高齢の方が続々と引退していく中で、新規若年層が来る割合などそれには遠く及ばない。しかも各人の給料であり年収は上がってこないだろう。少しは上がるだろうが、今の平均年収が500万円位だとすると、それが600万円や800万円などに上がってくるはずもなく。収入はほとんど変わらない中で、今後も凄まじい物価高騰が続いていく。そういった中で、皆の生活そのものも脅かされていく。
そういった時代背景の中で、需給バランスが需要に寄っているはずの建設業界はその流れに反して衰退していくだろう。求められてはいるが、供給が追い付かない為、衰退していく。黒字倒産みたいなものだ。そしてその唯一の対抗策である金額のアップに各経営者は皆、踏み切ることはできない。99%の会社はもう無理ではないだろうか。僅かな金額アップなどはアップとは言えない。原価アップの分だけ上げても足りないのに、原価アップにも及ばない売価アップにどこまで意味があるのか。
今後のあらゆる経営は徹底した金額のアップしか対抗策などはない。「いくら上がるのが妥当なのか?」と、そこを本気で考え、実行していける会社だけが今後は生き残っていく。人がいない、人がいないとばかり言って抜本的な手を打てない会社に3年後はあっても5年後はまずないだろう。会社としては持続できたとしても、損益ベースでとんとんの会社にどこまで意味があるだろうか。
会社は利益を上げなければ存続の意味がない。それは著書にも何度も書かせてもらっている。その度に「利益だけが大事なのですか」との反響をいただくが、そう思うのであれば、今のまま続けてください、としかもう言いようがない。
建設業界は間違いなく衰退に向かっている。公共インフラも含めた世の中の設備投資欲に業界各社が付いていけないからだ。建設業界が付いていかなければ、国の発展すら危ぶまれる位だ。そこまで大きなことを考える程のレベルに私自身はないのだが、普通に考えればそういった思考に辿り着く。
今逃げ続けて後で後悔するか、勇気を持って変革に挑むか。大きな大きな転換期に建設業界各社は差し掛かっている。