今まで3000人の社員面談をして思うこと

コンサルティングする際には最初に必ず社員面談をしている。社員数が1人の会社でも300人の会社でも、パートの方や新入社員の方に至るまで、その「全員の方」と面談をして話をしている。

 

これまでのコンサルティング人生19年で、累計の社員面談の人数を数えてみたら、昨年夏時点で3000人を超えていた。これは自分でも驚きの数字だ。

 

面談では、コンサルティングを何故行うのか、今後会社をどのようにしていきたいと思っているか、などを含めての話をするのだが、その多くの時間は自己紹介を含めたお互いを知る時間、そして社員の方々の「状況」や「思い」を聞く時間となっている。時間にして30分程度だが、お互いの「雰囲気」を知るには十分の場となっていると感じている。

 

コンサルティングで「全社員面談」をしていると言うと、各方面からは驚かれている。「何故そんな面倒なことをするのか?」、銀行や各種機関の関係者の方々からは、今でも本当によく言われている。

 

コンサルティング(利益改善)をすると言っても実際に動いていただくのは社員の方々になる。その社員さんと話もせずに、この方向で行ってくれ、と指示だけ出しても動いてくれるはずがないという、全ては単純な思いから始めたものだ。その数々の社員の方々との面談の積み重ねが「信頼関係の地道な足掛かり」となり、大きな利益改善に繋がっていっていると言っても過言ではない。しかし社員面談は、コンサルティングを行う際に強力な推進力になると同時に、自分自身的には大きなストレス(ダメージ)にもなる。

 

社員の方々からすれば、新しく来たよく分からないコンサルタントが話をする、と言えば当然身構えてこられる。実際、面談時にはほとんどの方々は「強い防御態勢」を取られており、場合によっては私に対して攻撃的な姿勢をとってこられることもある位だ。それらを少しずつ解いてもらい、決して皆の敵ではない事を伝え、利益改善は社員の方々の為にもなる、という目的を柔らかく柔らかく伝えなければならない。

 

しかし人の身体というのは、人からの不満を聞きすぎると異変を起こすようになっているらしい。多くの社員の方々は、面談時には会社への要望であり、少なからずの不満を言ってくる。そしてその不満は大体が「人」に関する事になる。そういった不満を聞き続けると身体というのはダメージを受ける。

 

最近こそあまりないが、以前は社員面談の日は帰りによく嘔吐していたものだ。面談を終了し岐路に着く際に数分もすると気持ち悪くなってくる。そしていつもどこかのトイレに駆け込んでいた。「こんなのもう無理だ。やり方を変えようか」と何年も何年も思っていた位だ。しかし経験を重ね多少は「耐性」ができたのか、少しずつ自分なりに乗り越えられるようになってきた。しかしその緊張感は今も全く変わらない。

 

その社員面談では、「コンサルティングの目的」を伝える事以上に大事だと思っているのが、私自身の「人間性(人となり)」を伝えるということだ。実際、私自身にはそんな大した人間性などはないのだが、社員の方々からすれば、私自身が「いい人か、悪い人か、怖い人か」という点が最も重要な判断基準になっている。その30分の面談の間で「最低限の信頼関係」を作る事こそがコンサルティングにおいて最も大事な事であり、それこそが最も難しい事でもあるとも言える。それは今でも本当に難しい。

 

1日の面談では時間的には最大でも15人になる。それでも7時間半はかかる。社員の方が100人の会社であれば、それだけで1週間もかかる事になる。スケジュール的にも毎日その会社には行く事は出来ないから、社員面談だけで1ヶ月以上かかることもしばしばだ。そんなに時間をかけてまで、とも良く言われるが、ここは一にも二にも「急がば回れ」だと思っている。ここで時間をかけて「信頼関係を醸成」しないと結局は何もできなくなる、というのは自分自身身に染みてよく分かっている事だ。

 

わずか30分であっても、そこで出来た「2人だけの空間」であり対話は、後にお互いの大きな助けとなる。次回会社訪問時にその方と会った時、「先日はどうもありがとうございました。お子さんは野球頑張ってますか?」などの声掛けをするだけで心は通じ合う。

 

信頼関係は作るのが難しく、壊れるのは一瞬だとよく言われるが、深い深い信頼関係でなくとも、通常レベルの信頼関係は一瞬で構築できるとは私は思っている。但し、それを裏切ってはいけない。やると言ったことをやらなかったり、やるそぶりも見せなかった場合、相手は失望し、信頼関係は築けなくなる。「守るべきものは守り、やると言った事はやる」というのはどんな関係においても不可欠な事だと思う。

 

社員面談でなくとも、人との関りは全てそのようなものではないだろうか。何才になっても、何年キャリアを積んでも、新しい会社や新たな人達と会うというのは、本当に緊張するものだ。逆に言えば、その気持ちはいつまでも忘れてはいけないのだろうと、今更ながらに強く感じている。