「売上が下がる」というのは、経営者にとっては何よりも恐れたくなるワードだろう。その気持ちは本当によく分かる。売上だけは下げられない、売上だけは下げたくない、経営者は皆そう思っているはずだ。
利益の方が大事だと理屈では分かっているが、それでもまずは決算書の一番上にある「売上」があるに越したことはない。特にそれは「対外的な部分」から助長されている。それは主に銀行だ。著書でも何度も書いたが、銀行は仮に最終利益が上がったとしても、「売上が低下」した場合はその原因を聞いてくる。「何故下がったのか?」実際、私の立場でも今まで何回も何回も聞かれた質問だ。
毎回聞かれないにしても、「たまに」聞かれるだけだとしても、その言葉は経営者の胸に「深く」刻まれる。「売上だけは下げてはいけない」どうしてもそう思ってしまう。どれだけ会社の利益が上がっていたとしても、売上低下を指摘される場合、私などでも「売上維持」の対策用の物件の受注を促した事がある位だ。
売上1億円で粗利が1千万円の物件の受注より、売上5千万円で粗利が1千万円の受注の方がいいに決まっている。その受注への現場対応の労力は半分で済むからだ。他にもメリットは多い。しかし決算書上では売上高であり会社の受注そのものが「半減」したように見える。「売上が半減しているが御社は大丈夫か?」などとメインバンクに言われた日には、どうしても怯んでしまうだろう。現実的に、会社はどこまでの「売上低下」に耐えられるのか?という考え方は、私自身も各社にコンサルティングを行う際に「普通に」考えざるを得ない指標となっている。
ある会社のある期の数字で、売上高10億円・売上総利益1.5億円・一般管理費1.3億円・営業利益が2千万円の場合にどう考えればいいか?まず、その期の売上総利益率(粗利益率)は15%になる。1年間の全現場の平均の粗利益率だ。その「平均粗利益率を何パーセントまで上げる事が出来るか?」という考え方がまずはベースとなる。粗利益率というものは「全現場一律」ではなく、業種別・物件別・規模別でも違うだろうから、それぞれの平均値も踏まえなければならない。
ここで注意しなければならないのは、その各期の決算書における平均粗利益率は「本当にその会社の実力の粗利益率」かどうかという見極めになる。決して決算書だけを見て、「平均15%」という数字などを基準にしてはいけないのだ。
大体は、各期には各期なりの「事情」がある受注が存在する。大きな粗利益率の大型現場の受注という期もなくもないだろうが、概ね「超低利益率の大型物件の受注」が存在する。その受注が「期全体」を押し下げた数字こそが、先程の15%になっている可能性がかなり高いのだ。
普通に受注している現場の平均粗利益率は「20%」あるのに、「売上確保」又は「その時なりの事情を含んだ」低利益率の受注が全体の粗利益率を押し下げているのだ。そう考えると自社の「本当の実力である平均粗利益率」は20%という事になる。そこを見ずして、決算書の15%だけを見て、それが自社の基準値だと勘違いしてはいけない。
自社の地力である平均粗利益率が20%の場合、「売上低下に耐えうる損益分岐点売上高」というのは、営業利益2千万円を死守ラインとした時、その売上高は「7.5億円」となる。売上を25%落としても、平均粗利益率20%さえ維持できれば、粗利益は1.5億円確保でき、営業利益は2000万円得られるという計算だ。自社の地力であり目安の数字が、売上高の10億円であり、平均粗利益率15%というのとは実は違っていて、「売上高7.5億円であり、平均粗利益率20%」というのが売上高損益分岐点となり、地力の粗利益率だという事になる。
その数字が自社の「妥当性のある基準値」である場合、売上高7.5億円に対する「自社の現場部隊の消化能力は従来の75%」で済むことになる。人手不足もそこまで深刻ではなく、場合によっては人は余ってくるかもいれない。社員は無理する事もなく、より質の高い仕事を出来、余暇も生まれるかもしれない。
自社の「本当の」実力である「平均粗利益率」を算出し、自社に不可欠な一般管理費の数字から、必要な営業利益(又は経常利益か純利益)を足した上で割り戻せば、「本当に必要な売上高」は出てくるはずだ。
その数字の「算出」をいかに間違えずに出すことが出来るか、という点こそが重要になる。そして「そこで出てきた売上高」こそが、自社が売上低下に耐えられる数字の下限となるはずだ。ちょっと複雑に見えるが、実は簡単なので一度やってみていただきたい。
