建設業界は特殊な業界だ。製造業・卸売業・小売業・サービス業を含めた世の中の多くの業種の中でも、いつも特殊な扱いであり印象を受けている。そしてその印象の多くはそんなに外れてはいない。
今後、当ブログでは「建設業界の悪しき習慣」を、私の思いつく中で挙げていきたい。私の個人的な感想も含まれている部分もあるので、あくまでも「一つの意見」として見ていただければと思う。そして各回では、その「対応策も明記」しておくので、参考に出来ればしていただきたい。
今回はそのまず一つ目の「取決め前施工」になる。今回、このシリーズを書こうと思ったきっかけがこの「取決め前施工」だ。先日、私の顧問先の会社の役員の方との、ある打合せの中でその事象が発生して対応してもらったものだ。
「取決め前先行」。名前の通りで、受注の金額を決める前に、契約書を結ばずに「とりあえず」現場の施工を進めていき、施工中、場合によっては施工後に金額の取決めを行うというものだ。そしてこれはやはり、建設業界で多い事だと思う。
それでは何故、金額も取り決めずに施工を先行させるのか?
発注側から見れば、とりあえずは現場だけ進めさせて、後で希望金額を押し付ければいい、という考えもある。そこまで悪くは思っていないとしても、施工はもう取り掛かっている為、工事を中止には出来ない。よって、受注側は、もうその金額で了承せざるを得ないというものだ。
受注側のメリットは「仕事が確約される」という事だ。「最終の取決めがいくらになるか?」という不安はあるものの、施工している以上は自社が「受注した事」は間違いない。「金額は分からない。最悪赤字だったらどうしよう?」とも思うだろう。しかしもう一つの思いとして、「発注側の人は、悪いようにはしない、と言っている。黙って待っていれば、ひょっとして凄くいい金額を出してくれるかもしれない」との淡い期待を持つ。そういった両サイドの「都合のいい思惑」が重なり、金額を決めずに走る事がある。
しかし流石に、今の時代ではこの「取決め前施工」は減ってきているであろう。まして大手がそんな発注をする事は社内取決め上出来ないはずだ。しかし中小企業、零細企業同士であれば、まだまだそういった事は良くあるのだという事を、先日思い知らされた。
双方のもう一つの「思い」が、「面倒な事の後回し」だ。細かい事は後で、という思いが根底にはある。私がコンサルティングをしている際に、各社の「物件一覧」を確認させてもらっていると、1現場や2現場は未だに、「金額未定」の物件が存在する。心理的にはほとんどが上記の理由だ。
私も皆さんを責めるなど事は当然しないが、そういった現場は「すぐに」取決めをお願いしている。しかし、私がお願いしてもなかなか「取決めしない」営業や経営者もいる。その根柢は上記の理由というより、更にもっと深い部分で「折衝そのものを嫌う」という部分がある人も多い。折衝し易い相手とは折衝して、しにくい相手とは後回しにするというものだ。なかなか人の心理は深い。しかし誰だって交渉が大好きな人などはそうそういない。皆、そこには少なからずストレスを感じながら頑張っているのだ。
上記の対策については、「金額を決めて、注文書のやりとりが終わってからの施工を徹底」する以外にない。ここでは、あらゆる例外は持たない方がいい。先方から何と言われようが、金額を決めてから「初めて資材を発注し、施工を動かす」という事を「会社として」しなければならない。お互いにとって「取決め前施工」は、最終的にいい事など決してないからだ。
そもそも、世の中には後回しにしていい事など何もない。それがいかに困難な交渉であっても、いかに気を遣う交渉であっても、いかに辛い交渉であっても、後回しにしてはいけない。必ず「最初に」決めておかないといけない。仕事において「効率化」などは大事だが、「うまいことやりたい」などとは決して思わない事だ。皆、親として自分の子供にはそのように言わないだろうか?それと全く同じ事だと思う。
発注側も受注側も、どうか「取決め先行」だけは「決して」やらないようにしていただきたい。
